先週,日曜日に久しぶりに神保町へ行ってきました。靖国通りは車でたまに通過しますが、
今回は、車を停めて、街を散策してみる事にしたのです。本屋街を歩くのは学生時代
以来かもしれません。 学生時代、作家志望で映画ファンの友人と良く訪れた神保町。
 
もっぱら古本屋巡りをしていて、シナリオ集や古い映画のパンフレット、映画理論や
芸術論の古書を発掘していたものです。しかし社会人になってからはスキーの道具を
買うために訪れ、書店には目もくれませんでした。先日久しぶりに古本屋を覗いて
、当時の想い出が甦りました。 そしてネットで事前に情報を仕入れていたレトロな
喫茶店「ラドリオ」で一服するためにその場所へ向かいました。しかし、「ラドリオ」は
日曜定休日でした。そこで向かいの同じくレトロな喫茶「ミロンガ」へとターンしたのです。
 「ミロンガ」「ラドリオ」を知ったのは、つい最近。1年程前の事です。
自分が如何に神保町を知ってるつもりで知らなかったか、無知を恥じました。(笑)
 
 この2店は名も無く狭い通路のような道に仲良く並んで建っています。
その通りは靖国通りに面した書泉グランデの真裏の脇道なのですが、
なんとタイムトンネルです。現代と昭和初期を結ぶ空間が忽然と口を開いているのです。
ここが喧噪に満ちた表通りから、たった一本入った裏通りなのかと目を疑ってしまうほど。
 郷愁、レトロという甘い情感ではなく、歴史という重い時間の流れを感じます。
 
さて、神保町のタイムマシンは2軒の喫茶店の姿を借りています。
古びた扉を開けると、時間が止まっている事が判ります。古い録音のタンゴのレコードが
再生されていて、それを聞きながら店の空気に身を任せていると、ゆっくりと時間が
戻って行きました。
 
ふと部屋の片隅を見ると大学時代の友人Tがケーキを傍らに置き「ミロンガブレンド」を
飲みながら原稿用紙に向かっています。私は立ち上がり、彼に近づきながら声をかけました。
 
 私「奇遇だな。こんな所で遭うなんて。」
 
 T「久しぶりじゃないか。何年ぶりだ? そうだな。 この場所は我々に
   とっては再会に相応しい・・・」
 
私「今、ここで何をしているの? 仕事かい?」
 
T「このゆずのブラウニー食ってんだよ。絶品だぜ」
 
 私「いや、そういう意味じゃなくてさ・・」
 
T「俺さ、現代では普通の会社員になっちゃってさ。人事部で  
 
  新入社員の研修プログラム担当なんだよ。でもここに居れば  
  永遠の文学青年でいられるんだ。お前もどうだ。又、一緒に  
  同人誌で小説書いたり、映画評論をやらないか・・・」
 
そんな白昼夢に襲われても不思議ではない、独特の空気を、この店は持っています。
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